大洲市の山間部、標高500メートルに植菌を終えたばかりの水玉模様のほだ木が並ぶ。南東向きという好条件で太陽の光を受けやすく、県内でも屈指の広さのそんなほだ場で椎茸を栽培するのが中岡さんだ。学校を卒業してすぐにお父さんと椎茸栽培に携わるようになり、はや50年。「土壌もいいし原木はいくらでもある」と言うように、良質な原木となるクヌギの生息地域であるため、以前は酪農と炭を家業にする家がこのエリアでは多かったそうだ。しかしながら「牛を育てるということは一年中休みもないし、高齢化が進むここらではしんどかったんです。それに炭ももうあまり使わないでしょう。だったら炭に使っていたクヌギを使って椎茸栽培をしようという流れになった」のだそうだ。それからコツコツ。今では2ヘクタールで6万本という原木を管理しているという。「3月頃にはこのほだ場には一斉に椎茸が生えてきて、それはもう花畑のように綺麗なんですよ。その時にまた来てもろうたらええのう」と笑う中岡さんは、どこか誇らしげ。それだけの規模で栽培を手がけながらも、当然毎年ほだ木の天地返しはもちろん、しいたけの袋がけなどのほとんどの作業を夫婦のみで行うそうだ。さらには「香りが全然違うから、やっぱり榁乾燥じゃないといかんのです」と、今ではほとんど見られなくなった榁で薪を焚き、全ての椎茸の仕上げ乾燥を行うという。お米で言うところの稲木干しのようなものか。一度食べたらその香りが忘れられないと言われるほど、仕上がりがまったく違う。やはり惜しまずちゃんと手間がかけられたものは、“ちゃんと”美味しいことを再確認。ちなみに、中岡さんの好きな椎茸の食べ方は、寿司やうどん出汁に使うことだそうだ。