愛媛県のほぼ中央に位置する内子町。自然の多いこの町では、傾斜地をうまく利用した果樹園など農業が盛んな場所としても知られている。ここで50年近く椎茸を栽培している窪田さんがほだ場を構えている場所は、傾斜が45度に近いのではないかと思われるほどの急斜面だ。通常の人なら歩くのですらやっとのこの場所を、スイスイと足取り軽く自在に動き回る窪田さん。「なぜこんな急斜面にしたかというと、ここが雑木林だからなんですよ。杉や檜と違って12月上旬になるとこれらの落葉樹の葉が落ちて光が降り注ぐようになるんです。そしたら『早う芽きりよー芽ーきりよー』って話しかけてあげるんです」と笑う。「以前に比べると大分減らして管理が行き届く程度になった」とは言うものの、約2万本を天地返しもし、モノレールを駆使してほだ木の位置変えなどの作業を夫婦でこなしているというから驚きだ。またこの地域はスプリンクラーでの散水を必要とするが、急斜面ならではの高低差を利用して燃料を使わないでも水が回る方法を取り入れるなど、ハンディを逆にうまく利用するなかなかの策士だ。栽培をしていて一番嬉しい時は?と問うと、「なによりも収穫の時はわくわくしますね。あとは毎日欠かさず椎茸を食べるけんど、それが自分にとっての贅沢やと思うちょります」との答え。収穫時期は生のものを、時期外は乾椎茸が欠かさず食卓に並ぶ。冬の寒子などは焼肉の時に一緒に焼いて食べれば、肉よりも美味しいと言う人もいるそうだ。「辞めてしまう人も多いけど、今が正念場。ええものを作っている自信はあるから、それを続けていればいつかはまたちゃんと評価してもらえる日がくるはず」と、今日もほだ場に足を運ぶ。